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「もう晩御飯の時間なの?なんだか一日中食べている気がするわ。でも、おなかもすいてきた気もするし…。そうねぇ、お店で安いもの見て晩御飯のメニューを決めますかね。散歩がてらまた買い物に行きましょう。」
連れだって買い物に出る3人。店先の試食に飛びつくナミとユカ。石嶋が買った一匹のタイ焼きを頭としっぽに割って、どっちを食べるかで、ナミとユカが大騒ぎしながらじゃんけんをしている。家まで待てずに歩きながらタイ焼きをほうばるユカとナミ。
「ヨボ、ユカ。そんなに食べたら、おなかに晩御飯を入れる隙間が無くなるぞ。」
石嶋の警告にも、ユカは笑って取り合わなかったが、さすがにナミは、食べきれぬと判断したのか、自分が食べているしっぽの部分を、また半分に割って石嶋の口に放り込んた。
お店での食材の検討の結果、結局晩御飯のメニューはすき焼きなり、ああだこうだ言いながら食材を買いそろえる。そのうちナミと石嶋の家庭のちがいなのか、すき焼きに白菜を入れるか入れないかでふたりがもめ始めた。最終的には『私のタイ焼きを半分食べたくせに』のひと言が決定打となり、石嶋が折れた。お礼にナミは缶ビールを2本買って石嶋を慰めた。
家に帰り晩御飯の準備。石嶋がすき焼き鍋を取りだしコンロにガスのカセットを装着。ナミとユカが材料を切った。3人で食事を準備し、3人で鍋を囲んだ。食後は、ナミがユカをお風呂に入れた。パジャマに着替えさせて、ベッドにふたりで横になりながら、ユカを寝かしつける。
ナミは、ベッドで眠りに着いたユカの髪をなぜながら、今日一日を振り返った。劇的な喜びもエキサイトする楽しみもない休日。何をしたと友達に説明しようがないほど平凡な一日。しかし、ナミにとっては3人で肩を寄せあって過ごしたこの休日は、どんな高価な贈り物にも及ばない尊いものに感じた。見ると時計の針が午後9時を告げていた。
部屋着を脱ぎ捨て自分の服を着たナミが突然リビングに現れ、果物をむきながらナミを待っていた石嶋を驚かせた。
「ユカちゃんも寝たので、私帰ります。」
石嶋の顔から笑顔が消えた。
「そうですか…。」
「図々しく、遅くまでおじゃましてしまってすみません。」
「とんでもありません。あの、ヨボ…。」
ナミが石嶋の言葉を遮るように彼に問いかけた。
「ところで、ヒロパパ。ユカちゃんは石嶋さんのデートの相手と会えたのかしら?」
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