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「半分自慢だな。」
「当時はわたしと腕を組みたい一心で、慶應ボーイたちが長蛇の列をなしてわたしに腕を差し出したの。今、そんな私を独占している自分の幸福を、泰佑はわかってるの?」
「そうですか、たいしたもんですね。それが言いたいためにここに連れてきたの?」
「ちがうわよ。泰佑に一番素敵な東京タワーを見せたかったの。」
「ありがとうございます。ところで、慶應ガールのオキクはわかったけど、それより前のオキクはどんなだったんだ?」
「えーっ、今それを聞くの?ここで?」
「何、そのレスポンス。」
「うわー、聞くんだ。」
「だから、何だよそのレスポンスは?」
「話してもいいけど、さっきからライトグリーンの制服を着た叔父さんふたりが泰佑の車を眺めながら周りをぐるぐる回っているんだけど…。」
泰佑は車へ飛んで戻った。
泰佑がスターライトパスポートを2枚買って戻ると、希久美はすでにミニーのヘアバンドを付けてはしゃいでいた。
「次はTDLなの?」
「そうよ。恋人たちの永遠のデートスポットよ。」
「高校生じゃあるまいし…。」
「いいから行きましょ。」
希久美は、彼の手を握ると、はしゃぎながら泰佑を園内へ引っ張って行った。エントランスからワールドバザールを抜けて、メイン広場へ泰佑を導くと、広場の歩道にブランケットを敷いて腰かけた。
「アトラクションに乗らないの?」
歩道に腰掛けて動かない希久美に泰佑が問いかける。
「ここで、エレクトリカルパレード・ドリームナイツが始まるのを待つの。」
「ええ?まだだいぶ時間あるぜ。」
「泰佑もここにいらっしゃい。」
泰佑を自分の横に座らせた希久美は、さらに自分の膝を叩いて泰佑を促す。
「ほら、ここにくるのよ。」
「お、おい。膝枕なんて…。」
「いいのよ。おいで…。」
躊躇する泰佑の頭を抱えると、無理やり自分の膝の上に載せた。
「朝から連れまわしたから疲れたでしょ。ここで少し休みなさい。」
「しかし…。なんだか悪いし、恥ずかしいし…。」
泰佑は口で抵抗する割には、体がまったく抵抗を示さない。
「なによ、気持ちがいいくせに。恋人は周りの世界が見えないから、何をするにも恥ずかしがらないものなのよ。」
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