ドナリィンの恋

11/101
前へ
/101ページ
次へ
 カジュアルなイタリアンレストランを見つけ、店内へ。佑麻は、フロアスタッフにテラス席を希望し、紳士らしく椅子を引いてドナに着席を促すも、ドナは彼を通り越して隣のテーブル席に座り、悠然とメニューを開く。驚くフロアスタッフに小さく詫びながら、佑麻は仕方なく自分のテーブルに座った。指を鳴らしてドナの注目を引くと、メニューを開いて掲げながら、『何にする?』と手振りで問いかける。メニューは英語でも書かれていたので、ドナにもわかったが、彼女にちょっといたずら心がわいてきた。  小さな黒板に日本語で書かれた日替わりパスタメニューを指し示し、『これは何?』と首をかしげるしぐさ。 「これ? Aは、エビと小松菜のぺペロンチーニだから・・・。」  佑麻は離れたテーブルのドナに大声出して説明しようとしたが、彼のヘタな英語を他の客に聞かれるのも恥ずかしいと思い止まる。彼は、上半身を反らしながら泳ぐエビを表現し、からだを固めて畑にすくっと育つ野菜になり、そして指をちょっとなめて顔をしかめる辛い顔でパスタの味を説明した。ドナは、そんなパフォーマンスを披露する彼を唖然として見つめていたが、一通り終わったところで、今度はBを指し示す。 「えっこれも!Bは、イベリコ豚とマシュルームのクリームスープパスタ・・・、ちょっと難問だな。」  佑麻が指で鼻先をあげて豚になり、頭を抱えてマシュルーム。角を作って乳をしぼる真似をしたところで、ついにドナは吹き出した。懸命に笑いをこらえながら、『私、やっぱりこれがいい。』と通常メニューのボンゴレを指差す。 「なんだよ。人にさんざんやらせておいて。」
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加