ドナリィンの恋

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 しかしドナはある朝、彼が毎日のバス停通いで顔見知りになった高齢者に、親切に何かの説明をしている姿を見た。また、バスに駆け込み、転びそうになった子供を支え、無事に乗り込んだ子供に手を振る彼の笑顔もかいま見た。あんな恐ろしいことがあった夜と彼のイメージとが、今ではなかなか繋がってこない。 「So , what are your plans now ?(どうするつもり?)」 「Plans ? To tell you the truth, I don't know. I can't think. And I don't even know what to do.(どうしたらいいかわからない…)」 「Do you have any idea why he's doing that ? Does he really want to apology or..., there's something else? (そもそも、彼は何のために毎朝あのバス停でドナを待っているの。謝罪?もしかし   て、告白?)」 「What do you mean?(まさか…)」 「Look, If he really want to say sorry or ask for your forgiveness. He doesn’t have to do that every day. Just go straight to you and spread it out... (謝罪なら、早く受けちゃいなさいよ。そうすればもう毎日顔を合わせる必要もなく   なるでしょ。)」  『もう顔を合わせる必要がなくなる。』ドナは、その言葉を受け入れるのにわずかな抵抗を感じた。  ドナが謝罪を受け入れようと決心した朝。しかし、その日に限って、彼の姿はバス停にない。どうしようかと思い迷って、ベンチで腰かけていると、ほどなくして慌てて走ってくる彼の姿を認めた。彼の方はバス停にひとりたたずむドナを発見して、思わず立ちどまる。ドナが自分を待つ。彼にとっては想定外のことだった。彼は、すぐ逃げてしまう臆病な仔鹿に近づくように、ゆっくりと慎重に近づいていった。ちょうど5メートル位の間隔になった時、今度は、ドナが高鳴る自分の胸の鼓動を悟らせまいと後へ退く。彼は困って立ち止まった。そして少し考えると、今度はバス停のベンチに花束を置きゆっくりと自分が後ろへ下がった。ドナは、正確に5メートルの距離を保ちながら前へ進み、ついにベンチの上の花束を拾い上げた。
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