感情のカタチ

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「あーめあーめふーれふーれ♪」 梅雨。 渋谷の街には雨が降りしきり傘の花が咲き乱れる。街には濡れたコンクリートの据えた臭いが立ち込め、空は今日も鈍色である。 「ピッチピッチ、チャプチャプらんらんらー♪」 夕暮れ時のその雨の中行き交う人を気にもせずに歌い続ける青年は傘も差さずにびしょ濡れながらクルクルとスクランブル交差点を踊っている。 忙しく行き交う人々は彼に目もくれない。……否、見えていないのだ。 自分の身体以上もある大きな鎌を片手に黒いコートに身を包む彼は、如何にも死神であった。 ケラケラと楽しげな笑い声を響かせながら歌い続ける彼の歌声は雨の中を遠くから走ってこちらへ向かってくる人影を見付けたところで勢いを増した。 「あら あら あのこは ずぶぬれだ、やなぎの ねかたで泣いているー♪」 走って来るのはどうやら年の同じくらいの少女らしく、その表情には必死さが見てとれた。 「ピッチピッチチャップチャッ「黙れ、駄犬……!」 少女の怒鳴り声に「駄犬」と呼ばれた青年、 黒須麒竜は至極嬉しそうにようやく自分の姿が見える少女を見詰める。 「はぁい雨綺ちゃん♪そんなに真っ青な顔してどーしたのー?」 ガチガチと鳴る歯を噛み締めながらハチ公の側に置かれたバスの図書館へ身を隠した少女、椎名雨綺を追い掛けながら黒須は楽しくて堪らないと言った風に声をかける。
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