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「日本は危なくない?」
「ああ、あの代議士も、国会で証人喚問を受けることになった。夫人も俺達を追っかけるどころじゃないだろう。」
真奈美は、その背後で秋良が動いたことは十分わかっていた。
「すずちゃん、やっと日本に帰れますよー。」
乳首に吸いついて離れない鈴子を見ながら、真奈美が嬉しそうに話しかけた。
「真奈美、日本に帰ったら何がしたい?」
「まずは、お母さんやミナミにすずちゃんに会わせてあげたいわ。」
「そうか。」
「それに、あなたのお母さんにもね。」
「馬鹿言うな。そんな必要はない。」
「秋良、まだわからないの…。」
真奈美はシャツの上から秋良の鎖骨に残る銃弾の傷痕を指で撫ぜた。
「あなたがすずちゃんを守って死にそうになったことは、すずちゃんは全然知らない。あなたもそんなこと言わないでしょ。親ってそういうもんじゃない?」
「そうかな…。」
真奈美はすずちゃんをはさんで、秋良の腰に手を回すと、背伸びをして彼に優しくキスをした。おとぎ話ではない。真奈美は本当に幸せそうだった。 <了>
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