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「昨日の事は怒ってないから!溺れてて偶然掴んじゃったんでしょ!」
「ご、ごめっ……ごめんなさい!わざとなの!故意的にやったの!うわぁああぁぁぁぁぁん!」
なんだとっ!ゆ、ゆるさぁnいやいやいやいや!落ち着け俺!彼女はあんなこと言ってたけど十分反省してるじゃないか!第一こんなに謝ってるのに許さないなんて男として最低だ!
ぶん回されながら大きく深呼吸。顔に激しく風が当たってしづらいけど構わない。どうせ形だけの深呼吸だ。
「ねっ、ほら!こっち見てよ!向き合って話そうよ!」
「や、やだよぉ!笑顔がすごく恐いもん!」
あれっ、顔に出てたか?もしかして必死に掴みながら笑顔にしたからかもしれない。無駄に笑顔にするのを諦めた。
と、走り続ける彼女の先がたまたま目に入った。
「あ、道がない」
何て言うか、うん。道がなかった。崖ってやつ?ずっと先にあるのに彼女すごく早くてもう目の前に感じてしまう。
「えっ、ちょ……」
……っとまって――何て言えなかった。だってほんとに速すぎて、今までは障害物とかなかったから言えたわけであって、今回は彼女の足がどんだけ速いか見せられたよ。
一言かける前にはもう崖飛んじゃったんだよ。
「うゎはああぁぁぁぁ……!」
なんという高さだ。下を覗くと十や二十程度の高さじゃなかった。下には半径だけでも二、三百メートルは余裕に超えてそうな大きな湖があって落ちたらひとたまりもなさそうだ。
「な、何で離さなかったのさぁ!」
「そんな余裕がなかった」
だってたった一言を言い終わる前に飛んじゃったんだよ。まさかのことだったし、ねぇ……。ていうかキミこそなんで崖なんて飛んだのさ。絶対見えてたでしょ。
「だいたいなんで飛んだのさ」
「わ、私は平気なの!」
そのまま俺たちは勢いよく真っ逆さま。空気抵抗なんて関係なく湖へ向かって落ちていってる。他のみんななら何かしら抵抗するだろうけど、諦めのいい俺は 疲れが溜まっていて魔法を使用する気が起きない。
素直に落ちるとしよう。
ちょっと痛いだけだろうし少し我慢すればいいか。
そして、大きな水飛沫を上げて俺たちは沈んでいった。
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