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「こ、ここだよ……」
彼女に連れられてやってきたのは俺が流されていた河の上流で、どうやらここがこの山の異世界物出現ポイントの一つらしい。
確かによく分からないものが所々に落ちていて、よく見れば何かの骨や服なども落ちている。どう見たって襲われた後だ。最悪、俺も目を覚ますことなくあんな姿になっていたかもしれない……。
「でも、その空間ってのが見当たらないんだけど……」
俺が吸い込まれた、彼女の言う空間は一切見当たらない。
人骨などは抜かし、俺の知らない物がよく落ちているけどやはり信用と言うか、異世界だって思える確信できる何かがほしい。
「たぶん、もう閉じたんだと思う。異世界の物だったらたまに持ち帰ったりするけど、に、人間さんと関わるの、は、初めてだから、実際に空間の体験話も初めて聞いたし……」
「そうなんだ。じゃあ何で空間や異世界の話を知ってるの?」
「ほ、他の妖怪や河童仲間から聞いたの。それに百六十年ほど生きていれば知識くらいは付いてくるから……」
「へー……、……ん?」
あ、あれ?今なんか違和感のある言葉言わなかった?
「ど、どうかしたの、に、人間さん?」
「い、いや、今なんて……?」
「え?あ……えと、他の妖怪たちから話を聞いて……」
「う、うん。その後のやつ……百六十年生きたのどうのって、そう言わなかった?」
「い、言ったよ。その、正確には、百六十と三年なんだけど……ご、ごめんね、きちんと言わないで……。お、怒ってる、よね……」
不安そうに恐る恐る尋ねる彼女はまるで人間の子どものようだ。俺よりか背の低い彼女を見下ろす俺は、まるで何もしてない子どもを不安がらせるダメな大人のようだ。
「ち、違うよ。ただ、見た目と年齢が全然あってなくて、ホントかどうか信じられなくて……」
だって、彼女の言う年齢が嘘でなければすっごいロリババ…ゲフンゲフン…かなりの歳上で大先輩だし、この見た目でその年齢って魔族や天人族でも見られないぞ。
嘘もついてる様子もなさそうで、異世界の可能性も高くなってきた。
「異世界の、に、人間さんには嘘だって思えるけど、これがこの世界じゃ当たり前で、私は他の妖怪と比べたらまだまだ幼いんだよ」
「百六十で?」
「う、うん。五百や千年二千年は当たり前で万や億単位で生きてる妖怪もいるよ。そ、それに、元人間さんでも数百年生きてるのも何人かいるよ」
「…………」
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