妖怪と魔女と俺と

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俺の住む世界の人間はいくら抗おうと最長で百を少し過ぎるくらいだ。 成長せず不老不死で有名なエルフ族であろうと二百年も生きると光となり自然に返ると言われている。もっともエルフ族は特別な事をすると二百年たつ前に光になると言われているが確認されていない。 きちんとした寿命を持つ最長の人種でもよくて百八十前後。人間の俺からすればそれだけでも凄いことだ。 「そ、その、他の妖怪にも会ってみる?」 「い、いや、まだ頭が追い付かないから……」 断ったのもそれらの話が嘘であるなら笑い話ですむけど、事実としたらとんでもない奴らに違いない。せめてこの場所やようかいなどの情報を得て、本当に異世界かどうか確かめてからでも遅くはない。 「ならキミも……」 「う、うん。河童も妖怪の一種で、に、人間と比べると何倍も生きてるの。だ、だから、見た目はちっちゃいけど、私は、人間さんよりお姉さんなんだよ」 と、もじもじと恥ずかしそうに、だけどどこか誇らしげに。 見ただけでは妹だと思うが黙っておこう。 「俺のことを人間って呼ぶのも人種が違っていたから?」 「それもだけど、に、人間さんとお話ししたの百四十年振りだから、き、緊張しちゃって、な、何て呼べばいいか分からないし……」 百四十……いや、驚くな俺。それが普通の世界なんだ。 「に、人間さんと、仲良くするやり方も、近づき方も、笑い方も、ぜ、全然、分からなくて……そ、それに、私たち河童は、人間さんたちに……」 震える彼女は、それ以上は言わなかったけど俺は鈍いわけではない。この世界の人間は彼女の人種、かっぱ、もしくはようかいそのものを恐れているようだ。 前日、彼女が俺から逃げ出したのは、河に沈めたのとはまた違う理由があるのかもしれない。 「でも、俺とは仲良くできてるよ」 「異世界の人で、私たち妖怪を知らなかったからね。気づかなければ湖で助けた後に、すぐにでも逃げようとしてた……」 「でもさ、今はこうして人間の俺といられてるのは事実で一歩進展したって考えてもいいと思う。俺は無知でキミを驚かせてばかりだったのにキミに何度も助けられたよ」 「だ、だって、この山に、に、人間さんがいたから気になって……し、心配だったし、それに、な、仲良くなれたらなって思ったから」 あたふたと言い訳するように言う彼女を見て、なぜかっぱやようかいはこの世界の人間に恐れられているのかと思った。
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