妖怪と魔女と俺と

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水面上空にはさっきの女の子が河の中にいる俺たちを見下ろしながら浮いていた。水面を挟んで映る彼女の瞳は俺を捕らえ、先程の発言も嘘に感じられないほど鋭かった。 「あら、宣告はしたはずよ」 「こっちの都合も考えなよ!このわからず屋!この子は山の事や何で山にいるかも分かってないんだ!キミの都合だけで物事を考えないでよ!」 「私はこの山の規則に則っているだけ。文句を言われる筋合いはないは」 「あぁもう!普段は規則のきの字も考えてないくせに!」 白色の髪の女の子は魔法陣を辺り一面に展開すると指先を俺に照準した。何か来ると思った時にはすで遅し。幾つもの輝きが河に向かって放たれた。 大小様々な火の玉は弾幕となって上空から俺たちへ目掛けて襲いかかってくる。 「もうっ!後で文句がたくさんあるんだから!」 叫んだムラサキナズナさんは右腕を振ると河が大きく荒れた。腕を突き出すと水が宙へ溢れだし巨大な円状の壁へと変わる。 「回れ!」 水の壁は渦を作るように回転すると向かってきた炎と衝突した。炎の弾幕は激しい爆発を起こしながら渦の水壁と対峙する。 地形と相性がこちら側を有利にさせていくら激しい弾幕が来ようと全くびくともしない。だがムラサキナズナさんは険しい表情。まるで今にも敗けてしまいそうな気がしてしまう。 手を貸したいけど河の中でまともに動くことはできず、あの魔法使いは俺よりかも遥かに強い。相手の手の内が分からないのに魔法を放っても返り討ちにあうだけだ。 普段背負っている愛用の剣も生憎学園の寮へ置いてきている。実技の授業がないからって面倒臭がったのが裏目にでるとは……。 「あの、な、ナズナさん」 「ひゃっ、ひゃいっ!」 ただ名前を呼んだだけなのにテンパって裏返った声。 あわわと慌ててしまい渦の水壁が歪んでしまいそうだ。 ……話しかけるだけで足を引っ張るかも。 「妖力に乱れがあるわ」 「え、あっ――」 巨大な爆発が水壁を消し飛ばすと衝撃が俺たちを襲った。吹き飛ばされる寸前俺の水の膜を厚くしてくれたが所詮は付け焼き刃。一瞬にして吹き飛ばされた。 逆さまに宙に投げ出された俺は無防備な格好。 半分諦めていると、数本のリングが俺を包むように丸い輪の牢となり囲んだ。 「水の中は寒かったでしょう。すぐ暖めてあげる」 そんな優しい言葉と共に現れたのは魔法使い。どう聞いても言葉の裏に殺意しか感じられない 。
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