妖怪と魔女と俺と

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「それっ!」 腕を振ると大きな波が発生すると、容赦なくノインさんを左右から包み込んだ。花は散り、地に落ちたり波に巻き込まれたり。 極った!って思ったけどそう簡単にもいかない。水圧と水流にまいることもなく平然としていて、口元は何かを呟いているように見える。水流で歪むため口の動きまでは読めないが、口ずさんでいるのはさっきのスペルの続き。 「あっ……」 ムラサキナズナさんも気づいたのだろう。水流を止めず、じっと彼女の口元を見つめている。 「ど、どうしたんだい」 「しっ、黙って!舌噛んじゃうよっ」 その腕から思いもしない力で頭を掴まれ河に沈められた。全身が水で濡れ、一瞬にして俺を包む膜へ変化した。……だけどこの膜、今までのとはなんだか違う気がする。 強化、そう言えばいいのだろうか?魔力ではない何か似たものを感じられる。 「『魔鳥――フェネックス』」 「あれは……」 ノインさんを包む水流は弾かれて、背後から巨大な魔力が溢れてきた。体中に彼女の魔力が巡って、体の震えが止まらない。 凄い!これが、異世界の魔法使いの……ムラサキナズナさんが言った“魔女”っていう者の実力……! 金色に溢れる赤い炎と共に出現したのはノインさんより一回り大きい炎の鳥。 とても良いものとは言えない禍々しい魔力、全てを焼き尽くすであろう金色の赤い炎、俺がどうこう太刀打ちできるものでないのは一目瞭然だった。 「大丈夫?ノインの魔力に酔ったりしてない?」 「平気、うん……なんともない……!」 平気なわけない。今にも意識がとびそうだ。嘘つく必要ないのに、火の鳥を目にしたからだろうか?絶対に逃げたらいけないって思えた。 「人間さんは強いね。ノインのフェネックス見ても自分を保てるなんてさ」 「自分でも思えるよ」 ついつい笑ってしまう。あいつらと過ごした学園ではこんな凄い魔法使いも魔法も見れはしない。 だからかな?こんな状況でも笑っていられるなんてさ。 「無駄話は終わった?」 「終わったよ!まったく……いつもより出すの早いんじゃないの、それっ」 「今日は特別よ。文句があるならいつもの場所に来なさい、紅茶でも用意していくわ」 「あいにく、今日は用事があるんで遠慮するよっ」 火の鳥が巨大な翼を羽ばたかせ不安と恐怖しか感じられない鳴き声をあげると、炎を撒き散らしながら俺たちへ襲いかかってきた。
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