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何で河から声が?
別に河から声がしても不思議ではない。姿を見せず脳内に直接流したり声を風に乗せて届けたりそんな嫌々なやり取りよりかはましだ。
顔を河の方に向けると河岸から人間の体が出ていた。よく見ると出ているの上半身だけでどうやら河に浸かっている模様。
「だ、誰?」
思わず尋ねた。
「だ、誰とは失礼だね。私は河で流されてたキミを助けたんだよ。き、キミこそ誰、に、人間さん」
助けて?……あ、だから濡れていたんだ。誰だか知らないけど着地地点を河の上にするなんて酷すぎない?
「キミが助けてくれたんだ」
「う、うん。困ったときは、お互い様っていうか、ただの気まぐれっていうか……」
あ、照れてる。
「そんなことないよ、ありがと。俺はスウェラ・ディ・フスティシア。キミは?」
「わ、私は紫奈瑞菜」
ムラサキナズナ……変わった名前だな。
あまり聞かないような名前を記憶しながら体を起こし、暗くてよく見えないため近づいて話そうと思った。
「え、ゎ、ぁ……やっ!」
すると近づいた瞬間、トポンと音をたて慌てながら潜られた。
え?きょ、拒否られた。
「いや違うでしょ!溺れたとかじゃないよね!」
河岸に近寄って水面を覗くが彼女の姿がよく見えない。月明かりだけじゃ足りなかった。
幅は三メートル程度、深さは分からないけど溺れてたら大変だ!
「あぁもう!【輝け】」
右手の指先を空に向けるとそこから小さな光の玉が頭上に現れた。僅かな高さだが辺りを照らす程度に出現させたもの。
立ち上がり水面を見渡してみる。ここでようやく河がよく見えるようになり、どうやら胸より低い程度の深さだった。
「いたら返事をしてっ!」
返事は返ってこない。
『スロノス学園生徒、スウェラ・ディ・フスティシア。救出してくれた少女を驚かし河へ転落させる!』
頭の中に未来の自分の姿が映った。
「い、嫌だ!それだけは絶対に阻止したぃゎあぶっ!?」
未来の姿を消そうとしてたらどこからともなく足を掴まれ、反応する前に河の中へ引っ張られた。
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