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テーブルには作られたばかりの食事が並べられていて、初めて見る料理の中で特に興味を持ったのが底のある丸いお皿に注がれた白い粒々の料理。なにか特徴があることもなく湯気をたてながら置かれているだけ。
「あの白い粒々の料理は?」
「え、知らないの?」
どうやらこれ以上となく常識的な料理のようだ。嘘でもついているのではと顔を見られる。
「あれはお米って言う植物から作られた料理でご飯って言うの。人間さんたちの主食で色々な料理に活用できるしこのように単品でも出せる美味しい食べ物だよ」
「へぇー……俺の世界にはオコメはなかったから初めて見たよ」
椅子にかけさせてもらうとムラサキナズナさんも向かい側の椅子に腰を下ろした。料理の香りにお腹が鳴りそうだ。空腹を我慢しながら料理を眺めているととても重要なあることに気づいた。置き忘れかと思い辺りを見渡すけどそれらはどこにも置いていなく俺は困ってしまった。
「人間さんどうかしたのかい?」
俺の異変に気づいてくれたムラサキナズナさんはテーブルに置いていた茶色の棒を二本持ちながら尋ねてくる。
「いや、あの……フォークやスプーンがなくて……」
「え?…………あ、あぁ!そっかそっか!異文化だもんね!」
また一人納得したように楽しそうに頷いた。できれば俺にも教えてほしい。恐らく食事も世界観が出たようだけど、いったい何が問題だったのか分からない。
彼女は席を離すと食器棚の引き出しから音をたてながら何かを取り出した。
「は、はい、これを使って」
手渡しされたのは木で作られたフォークとスプーン。フォークの先端はやや丸みがありスプーンは何一つ反射しないがどちらも丁寧に作られていた。
「そ、それもね、人間さんたちの真似して作ったの。料理を食べる時はね、お箸以外も使用するようで気になってそれ含めて二組だけ作ったの」
「なかなか器用なんだね。俺の世界には木で作られた精巧なフォークやスプーンはないよ」
「そ、そうなの?……なんだか嬉しいな」
照れ臭そうに頬を染めながら嬉しそうにもじもじする彼女は本当に人間が好きなんだと思えてくる。この世界の人間は妖怪を避けているようだけど、俺と接する彼女はとても人間に友好的だ。自身の行いを人間の真似事だといっているけど、人間と関わらず無知の状態から始めたのなら凄いことだ。
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