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濡れた服を絞りながらゆっくりと近づき、もちろん警戒を怠らず魔法陣をいつでも展開させれるようにしておいた。
「【耀け】」
明かりを灯すと少しずつ姿が見えてくる。俯せだが肩ほどまで伸びてる髪、青色の服の上に緑色のジャケットと青色のショートパンツ姿の女の子。
さっきの女の子だ。見た目が所々似ていて、河ごと吹き飛ばした時に偶然にも助けれたんだ。
「だ、大丈夫っ?」
さっきの魔物が現れる前にここから離れないと。
ゆっくりと体を起こす彼女のもとへ俺は急いで駆け寄った。するとどうしたことだろうか。俺を見るや否や慌てて、まるで来ちゃダメと伝えたいように両手を前に出した。
その仕草に思わず足が止まった。
「えっ……あ、ぁ……ち、違うの……」
「え?」
ど、どうしたんだ?今にも泣きそうな声。河に落ちてから何かあったのかもしれない。けどそれにしては様子がおかしい。お互い助かったことに気づいてないのかな?
「大丈夫だよ。水中に潜んでる魔物はには驚いたけど、もう岸に上がれたからたぶん襲われないよ」
「っ!……そんな、つもりじゃ……ご、ごめ……ごめんなさいっ!」
「えっ、あっ!ちょっと!……待って!」
謝ると同時に彼女は森の奥へと一目散に走っていった。制止声は虚しく響き俺はポツンと一人、森の中に取り残される。
「お、追いかけないと」
急いで彼女が走っていった方へ俺も急いで走った。この森は危険だ。魔物がそこら中にうようよ潜んでいそうなのに彼女を一人にしていられない。
それに俺は助けてもらった。もしかしたらあの時点で魔物に捕まっていて出られなかったのかも。だとしたら俺が原因で……?
「ま、待って、ナズナさん!」
俺は叫んだ。この森は大木や段差が多く、また服が濡れていて走りづらい。それにすぐに追いかけたのにもう後ろ姿が見えない。
走っては跳んで、屈んでは走って、それの繰り返しでなかなか追い付けない。けど叫ぶ度に彼女は律儀に返してくれる。
「夜の森の中は危ないってば!」
『だ、ダメだよ!追ってこないで!』
むっ、あっちか。おかげで見失わない。早く追いついて落ち着いてもらわないと。
と、目の前に茂みが。小さな茂みで跳べば難なく通り越せた。
「えっ?」
しかし着地地点がなかった。ま、まさかの崖!?
「うわあああぁぁぁぁ……!」
俺の情けない叫び声は再び森の中で虚しく響いた。
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