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すぐに指先に魔法陣を展開させて前へ向ける。色は無色。無属性の魔法。
「【照らせ!】」
一瞬の隙を作らせるために強い閃光を放つ。初級中の初級の魔法だけど、使いようによってはこんな夜では目に刺激的だろう!だって俺自身辛いもん!
相手の倒れたりこけたりしてる間に俺は振り向き崖の上に向かって跳んだ。六メートル弱程度だけどこれなら身体強化しなくても楽だ。
崖に掴まり這い上がろうとした時、何かに足を掴まれた。何奴!?慌てて足を掴む奴を見ると俺は驚いた。なんと見失ったはずのムラサキナズナさんだったのだ。
よ、よかった。もしかして彼女もここまで逃げてきたのかな?
「今すぐ上がるからしっかり掴まっててね!」
妙なところで再会したところで早速一緒に逃げよう。猿の群れに落ちたらひとたまりもないからね。
ということで這い上がろうと力を入れた。だが体は言うことを聞いてくれない。むしろどんどん下がっていく。
何で!彼女を見るとなんと崖に足をつきグイグイと引っ張ってる!なにやってんのこの子!
彼女はニタリと満面の笑み。これは怖い。一種のホラーだ。
彼女を振り払うべきか悩むも崖下は光に慣れてきた猿の群れ。当たりはしないが石や何やら投げてくる。
あんなところに落としたら彼女も無事では済まないはずだ。振り払うことに良心が痛む。彼女ごと一緒に這い上がろうと頑張った。
だが身体中疲労で一杯。もう無理かと思った瞬間崖の上に誰かいた。なんとムラサキナズナさんではないか!だから何でさ!?
いやもうなんでもいいや!とにかくヘルプ!
助けを求む瞳を彼女に向けた。彼女は満面の笑み。僕も気持ち悪いくらいの必死に笑顔。すると伝わったのか、彼女はしゃがむと俺の両手をそっと優しく握ってくれた。
な、何はともあれこれで助かっ――
「でも残念」
「え?」
満面な笑みのまま両手を離された。
「あれぇ!?」
さよなら現実、はじめまして冥界。
「悪魔かあんたは!」
朝日のきつい目覚めだった。
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