5人が本棚に入れています
本棚に追加
雛祭りの日。
私は彼氏を連れて来ていた。私の両親に紹介する為だ。
私達はお互いに結婚を考えており、彼の両親にはもう挨拶を済ませていた。
あの時、彼も少しは緊張していたようだが、私の緊張はマックスで、何を話したか等、覚えていない。
「まるで借りてきた猫のようだ」
彼はその日、笑ってそう言ったが、今日は彼がそんな状態で、私も同じ台詞を口にして、彼をからかった。
でも私も実際は、異様な緊張を感じていた。理由は、整然と並んだ雛人形が、私達をじっと見ているからだった。
いや、古い人形だから、きっとそう感じるだけなのだろう。私はそんな、非現実的な感覚を忘れようと、彼と両親に意識を集中させようとした。
最初のコメントを投稿しよう!