二日目『備えあれば患いなし』

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「ちょっと智ちんどういうことさ? 見事な説明不足してんじゃなくて? 今日一日晴ちゃんといて思ったんだけどさ、細かーな説明してないよね? 何々? 私と晴さんは以心伝心してるんです……なんて勘違いしちゃってるとかとか?」 「似ていない真似しないでください。気色悪いです。もはや存在自体が気色悪いです。逝ってください」 「あれれー? 漢字変換がおかしいような気がするのは清太ちんの気のせいだろうか?」 「真剣、逝ってください」 「おぶぶぶ」 ちょちょちょちょっと!! 二人しか分からないようなやりとりで突然喧嘩し始めないでよ!! やりとりの最初の時点では、清太の萩原さんへの呼び方がどこぞのアイドルグループか! なんて思ってたけど、萩原さんの双眸が剣呑に細められた次の瞬間には萩原さんは清太の顔を潰すような勢いでアイアンクローをおみまいしだしたもんだから、私は一人おたおたしちゃってる。 喧嘩なら止めるべきだろうけど、二人は仲がいいだろうから、だとしたらこれは二人にとってのじゃれ合いよね……多分。 自分をそう納得させながら片づけを終わらせると、萩原さんの答えをキッチンの前で立ったまま待った。 「アパートの契約は、荷物運搬の際に解約しました」 「あ、そうなんだ。じゃ私は今日からここに住み込み……て、何言っちゃてんすか!? は!? 解約!?」 「はい。解約です」 真顔で、ちょっとそこのコンビニまで行ってくるわ、なんて言いそうな感じでさらっと言ってきたけど、私からしたら聞き逃せれないカミングアウトなんですが!? シンクの縁に両手を付いて、前のめりに体を倒しちゃったじゃないか!! 「わわ私の許可なく解約!? 印鑑は!? 本人かって証明は!?」 「日吉晴さんの許婚で、これから結婚に向けて一緒に住みますので、アパートの契約は解除してくださいと言いましたら、快く解約してくれましたが」 「なーるほど。そりゃ納得……するかぁぁぁ!!」 ありえない設定を無表情でさらっと言うなぁぁぁ!!
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