祝勝会の悲報

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「ん? そなたは……勇者、クロムか?」  王は首をかしげる。 「にしては、ずいぶん細くはないか?」  彼の疑問は当然だろう。鎧はぶかぶかで、剣も身の丈にあっていない。誰か小柄な別人に無理矢理着せたような恰好だ。 「いいえ、彼は勇者です。お忘れになりましたか? この鎧と剣は、真の主以外身に着けることができないことを」 「では、その者は確かに勇者……」  広間にどよめきが広がる。まさか英雄がこんな姿になるとは、誰も予想していなかった。 「この姿こそが呪い。魔王は彼から声と力を奪ってしまったのです」  その場にいたすべての人間が息をのんだ。  魔王を倒すという偉業を成した者に新たな試練が課せられてしまったのだから。 「楽しい宴の席でこのような報告をすることとなってしまい、申し訳ありません。私たちは急ぎ、呪いをとくために旅に出たいと思います」 「そうか……残念じゃ。そのような事情なら仕方がない。旅に出るというのなら、飛行艇でも船でも我が国の乗り物を使うといい。だが……せめて今夜だけは城で休んでいってくれ。魔王と戦って疲れたであろう?」 「お心遣い、感謝いたします」  賢者は、再びマントで勇者を包み込むと静かに広間から立ち去った。
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