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祝勝会の悲報
アルテア聖王国は、魔王城陥落の知らせを受けて勝利の美酒に酔いしれていた。300年の長きにわたって魔王軍の侵略に苦しめられてきたのだ、その喜びは推して余りある。
だが、その歓喜の宴にはひとつだけ、欠けたものがあった。
この勝利の功労者、勇者の姿である。
本来ならば主役として王城で歓待を受けるはずの人物は、しかしいつまでたっても現れない。
人々が不安に駆られ始めたころ、勇者の右腕である大賢者が王の前に姿を現した。
「おお、大賢者カイトよ。よく来てくれた。今宵はそなたのための宴でもある、存分に楽しんでいってくれ」
「ありがとうございます、国王陛下」
「……して、勇者クロムはどうしたのじゃ。このたびの魔王討伐は、勇者の活躍あってのもの。彼がおらぬのでは、我らは心から喜ぶことはできぬ」
「それが……」
賢者は苦しげに目を伏せた。
「まさか!」
最悪の事態を予想して王が腰を浮かせた。慌てて賢者が手を振る。
「勇者は生きております。ですが、魔王は倒れる寸前、彼に呪いをかけたのです」
「何と、呪いとな?!」
賢者はばさりとマントを翻した。その影に隠されていた人物が姿を現す。
勇者の鎧と剣を身に着けた戦士。だが、彼はなぜか頭からすっぽりとフードをかぶり、その顔を隠してしまっていた。
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