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「おいクロム、部屋についたぞ」
城の客間に入ると、カイトはオレをマントの中から出した。支えていた手が離れてオレはその場に膝をつく。
「あーもう、この鎧重てえ……」
「こら、扉を閉めるまではしゃべるなって言っただろうが」
ドアを閉めながらカイトがオレをたしなめた。オレは力なくそのまま絨毯の上に座り込む。いつもより隙間が多いせいか、鎧はがしゃがしゃと耳障りな音をたてた。
「大丈夫か?」
「あんまり大丈夫じゃない。背中の金具外してくれ」
「わかった」
いつもなら眠っていても身に着けられるオレの鎧。だけど今はカイトの手がなければ脱ぐことも着ることもできなかった。
ぱちん、ぱちんとカイトが留め金を外すたびにゆっくりと体が軽くなる。
胸あてが外されると、オレは大きく深呼吸をした。
「……くそ。肩はぶかぶかだってのに、なんで胸だけ圧迫されるかな」
「そこだけでかいせいだろう」
カイトがオレの胸元を見る。そこには男の手にもあまるほどたっぷりとしたふくらみが二つあった。形がよくて色っぽい……女の胸。いや胸だけじゃない。六つに割れた腹筋があった場所にはすべすべのおなかが、がっちりかたまった筋肉があった場所には丸くてやわらかい尻がある。
オレの体は、魔王の『祝福』を受けてなぜか女になっていた。
しかも、むちむちぷりぷりの美少女。
元から女顔だったけど、本当に女になったら自分でもびっくりするくらいかわいい。
たぶん、着飾ったら王女様とも張り合えると思う。
いやそんな評価はおいておいて。
「なんで祝福で女になるんだよ~」
魔王の城を脱出してから、何度目かの疑問を口にする。
見た目の変化に、筋力の低下。国一番の戦士からただの貧弱な女の子になったダメージはでかい。
魔王のやったことは確かに最高の嫌がらせだが、どういうプロセスを経てこんなことになったのかさっぱりわからない。
「だから、これからそれを解明しにいくんだろう?」
「そうなんだけどさあ」
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