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鎧を外されながらオレはため息をつく。
「魔王を倒してこれからって時に、こんな形で出鼻をくじかれたら、腐りたくもなるっての」
ごろんと絨毯に寝転がる。鎧をまとめていたカイトがオレを見下ろして眉間にしわを寄せた。
「そんな恰好で転がるな。上着羽織ってベッドに行け」
「なんだよ、いつもなら放っとくくせに」
「……俺の目に毒だ」
ぷい、と視線をそらされる。カイトの口から出るとは思わなかったセリフに、オレは目を丸くした。
「えっと……目の毒って、オレが?」
まあ、確かにシャツ一枚で胸とか足とかいろいろ見えてるけどさ。
「お前魔女のセクシーダンスにも眉ひとつ動かさなかったじゃん! なんでこの程度で困るんだよ」
「うるさい。ああいう熟しすぎなのは趣味じゃないの。さっさとこれ着ろ!」
ばふ、と頭からガウンをかぶせられる。
「ふーん、カイトはロリ系のほうが好きなわけねー。へー、ほー」
「元の体に戻る必要性、なくしてやろうか?」
ばちりとカイトの手の中で雷がはぜる。子供のころから『おしおき』に容赦しない奴だとわかっているオレはぶんぶんと首を振った。
「ちょっとやめろよ! 今の体力でそれくらったらマジに死ぬ!」
「だったら言うことを聞け」
「へいへい……っと」
おとなしくガウンを羽織ってベッドに倒れこむ。重心位置が全然違うこの体では、歩くこともままならない。
「カイトがいないと何もできないって、ガキの頃に戻ったみたいだ」
「あー、お前細かったからなあ」
「女みたいだっていじめられて、毎回カイトに助けられてさ」
無力な子供に戻ったようで、それが悔しい。
魔王を倒して、やっと使命から解放されたのに。
やっとカイトをオレから解放してやれると思ったのに。
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