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魔王城の決戦
禍々しいオブジェに彩られた玉座の前に、オレたちは立っていた。
玉座には漆黒のローブをまとった異形の王がけだるげに腰かけている。気の抜けた所作。だが、奴が油断ならない相手だということはオレが一番よく知っている。
「勇者クロムと大賢者カイトか……ふふ、この魔王に2人だけで挑もうとは無謀な奴らよのう」
「俺たちだけではないさ」
オレの隣に立っているカイトがつい、とメガネを押し上げた。
それに呼応するように外から人々の怒号が響いてくる。この魔王城を落とすために戦っている兵士たちの声だ。
「この城を守る四天王はもういない。外敵を排除する結界の要石も破壊させてもらった。……この城はじきに落ちる。お前の王国はもう終わりだよ」
カイトに国の崩壊を告げられても魔王の笑みは変わらない。
「はっはっは。そうだな。その通りだニンゲンよ。我が国は終わりだ……だが、我はまだ終わりではない。わかっておろう?」
魔王はにやりと笑う。
そうだ。国が瓦解しても完全に終わるわけではない。
こいつの息の根を止めなければ、また魔王軍は復活してしまう。
オレは剣を鞘から抜いた。
勝利を約束された剣が黄金色に輝く。
「だからオレたちはここに来たんだ。魔王殺しの血族の力、みせてやる!」
「ニンゲンふぜいが!」
魔王が立ち上がる。
同時にオレは床を蹴って走り出した。
うねうねとうごめく魔王の触手から、真っ黒い粘液のようなものがいくつも射出される。
しかし、それらはオレに当たる直前に蒸発した。
「何?! 惑乱の魔弾がきかない?」
「この世のありとあらゆる呪いを凝縮させた魔弾の噂はきいていたからな。事前に対策をとらせてもらった」
カイトが冷静に杖を構える。
「女神の加護をうけた俺たちに、呪いはきかない!」
「おおおおお、おのれ女神めえええ!」
魔弾を作り出していた触手が、一斉にオレに向かって来た。素早い攻撃だが、見えないわけじゃない。オレは慎重に1つずつ触手を切り落としていく。
「ははは、触手にばかり気を取られている場合ではないぞ?」
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