闇の中に佇む

2/4
前へ
/17ページ
次へ
  ある日、兄が突如失踪した。 当時、俺が小学校3年生の時の話で、兄は俺よりも二つ上だったので5年生だった。 俺たちはとても仲が良く、いつも一緒に帰るのが日課ではあったが、その時は確か、学校関係で用事があると兄に言われ、一人寂しく帰った日だ。 まぁ、小学校での居残りなどたかが知れている、すぐに帰って来るだろうと思い、兄との共同部屋でゲームをしていたが、気付けば母親がパートから帰って来た。 その時、既に夕方の5時過ぎ。今日は友達と遊ぶ約束などしていなかったハズだし、もしそうだとしても、俺に嘘を吐いて学校に残り、誰かの家に行くなどありえないと思ったのだが、俺は言い知れぬ不安と共に二階から下り、リビングにいる母親の元へと向かった。 それから思い当たる友人の家に電話を掛け、念のため学校とクラスメイト全員にも尋ねたところで、やっと兄が行方不明ということが発覚し、警察へ通報。 こんなことを言ってはブラコンと言われるかもしれないが、兄はとても綺麗な顔をした子供だった。 母親は日本人だが、父親はイギリス人で俺たちは所謂ハーフというやつで、ブラウンの髪と青い瞳を持つ俺たちは、同級生の間ではちょっとした異端児としてからかわれていた。(いじめ、と呼ぶにはお粗末すぎるし、クラスの半分以上は俺に友好的だった。兄にも友人はいたので、そこまで酷い差別は受けていなかったように思う。) そう、だからこそ、大人たちが最初に疑ったのは、誘拐。  
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加