闇の中に佇む

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  こんな時間に子供が出歩いているのか?視力はあまりよくないので、目を凝らしてみる。 そしてようやく確認出来たその姿に、細めた目を見開いた。 兄が、いる。 いや、目の錯覚だろう。いたとしても、他人の空似というやつで兄とは無関係に違いない。 止まりそうになった足をぎこちなく動かしながら、俺の心臓は全力疾走をした時のように激しく脈打っている。 何年も会っていないが、兄弟なのだ。何か、感じるものがあったのだろう。 ずいぶんと近くなった少年は、じっと俺を見据えていた。 無表情だったその顔に、笑みを浮かべ、口を開いた。 「久しぶり、陽透(ようすけ)。」 この10年間求め続けた懐かしい声に名を呼ばれ、俺の瞳からは、決壊したダムのように涙が溢れた。 そういえば、兄が消えた日の満月は、今日のように大きく、爛々と輝いていたな。  
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