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うっ、嘘…っ!
こんな街中で、しかもこんな人通りがある所で転ぶなんて。
痛いと思うよりも、恥ずかしさの方が先に立って、文深が急いで立ち上がろうとすると、
「…大丈夫?」
頭上から声を掛けられる。
「…えっ?」
驚いて顔をあげると、そこには、背の高い男の人が立っていた。
初めに目に入ったのは、文深を見つめる濡れたような漆黒の瞳。
そして、雪がかかった濡れ羽色の黒髪と通った鼻筋、薄い口唇は寒さの為かやけに紅くて…。
こんなに綺麗な男の人がこの世にいるのかと、立つことも忘れて、文深は思わず見惚れてしまう。
「…派手に転んだよね」
その人はクスッ…と笑うと屈み込んで、文深に右手を差し出した。
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