2.

4/23
前へ
/204ページ
次へ
うっ、嘘…っ! こんな街中で、しかもこんな人通りがある所で転ぶなんて。 痛いと思うよりも、恥ずかしさの方が先に立って、文深が急いで立ち上がろうとすると、 「…大丈夫?」 頭上から声を掛けられる。 「…えっ?」 驚いて顔をあげると、そこには、背の高い男の人が立っていた。 初めに目に入ったのは、文深を見つめる濡れたような漆黒の瞳。 そして、雪がかかった濡れ羽色の黒髪と通った鼻筋、薄い口唇は寒さの為かやけに紅くて…。 こんなに綺麗な男の人がこの世にいるのかと、立つことも忘れて、文深は思わず見惚れてしまう。 「…派手に転んだよね」 その人はクスッ…と笑うと屈み込んで、文深に右手を差し出した。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6992人が本棚に入れています
本棚に追加