私を救う小さな手

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「彩良……」 「ねぇね、悲しいの?」 その言葉にドキっとする。 「……悲しくないよ」 「でも、ねぇね泣いてるよ」 「えっ……」 彩良がくしゃりと顔を歪めた。 大きな目から、みるみる大粒の涙が溢れてくる。 「さらには分かるもん」 「彩良……」 「ねぇね、泣かないで」 「……泣いてるのは彩良じゃない」 流れ落ちる綺麗な涙を見ながら、私は気付いた。 私が嬉しい時、彩良は笑う。 私が悲しい時、彩良は泣く。 いつだって、彩良は私の側にいて、私の気持ちを感じ取ってる。 たとえ、私の気持ちが表情に出なくても。 彩良は私のそばにいてくれる。 大好きだって言ってくれる。 何で、気付かなかったんだろう。 何で、1人だと思ってたんだろう。 自分のことばかり考えていた。 私の力が暴走して、意識を失った時のことを思い出す。 あの直後のことは知らない。 だけど、意識を取り戻した私と再会した時、彩良は声が枯れて、疲れて眠ってしまうまで泣いていた。 きっと何も分からないまま、それでも小さな体で、私のことを心配していたのだろう。 このまま逃げ出したら、私を好きだと言うこの幼い妹を再び悲しませるだけじゃないか。 いつも、いろんな言葉を、ぬくもりを、幸せを与えてくれる彩良に、私はまだ何もあげていないのに。 ――嗚呼、私は馬鹿だ。 私の目からも、涙が溢れた。 彩良は泣きながら、ぎゅっと強く私の服を握る。 絶対に離さないと言うかのように。 「ねぇね、どこか行っちゃうの?」 「……ううん、行かないよ」 「本当?」 「うん」 「ずっと一緒にいてね」 「うん。彩良のこと、置いてかないよ」 「うん。ねぇね大好き」 「私も大好きよ、彩良」 小さな体をぎゅっと抱きしめた。 その暖かさにほっとする。 大事にしよう、このぬくもりを。 私の世界を変えた言霊の力。 どうして、私にこの力が与えられたのか。 それは分からない。 だけど。 守るから。 私が、この力で守ってみせるから。 私を救ってくれる、この小さな手を。
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