力の代償

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ふいに、何かがよぎった。 その微かな予感は、下手をすると気付かないほど小さくて。 それでも「何かが来る」と分かった。 だからといって何をすべきかも分からずに、ただ体を強張らせたところで…… ――"それは"訪れた。 ドンッと衝撃が襲ってきて、目の前が真っ白になる。 重力が自分の周りだけ重くなった、そんな感覚だった。 私は耐えきれず、ガクッと膝をついた。 そのまま両手をついて、荒い呼吸を繰り返す。 ドクドクと、まるで体全体が心臓になったように鼓動が大きくなる。 この感覚は何だ。 血が逆流しているみたいだった。 嫌な汗が全身から吹き出す。 体が熱い、手足が痺れる、思うように動かない。 世界が揺らぐ廻る霞む……。 嗚呼―― 言葉は声にならずにただ息が漏れた。 体の中で何かが暴れている。 そう感じたところで、私の意識は途切れた―― 目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。 彩良が倒れている私に気付き、泣き叫んでいるのを母が見つけたようだ。 体を動かそうとして、動かない体にため息をつく。 高熱を出した後のように、感覚が鈍くなっている。 重い体は、まるで自分のものではないようだった。 意識を取り戻した私に、看護師が説明をする。 一応、検査入院することになったと聞かされ、そっとため息をついた。 「原因不明」 数日入院し、検査して出た結果だった。 正直に言うと、私は薄々分かっていた。 これの原因が何かを。 退院してから数日後、2度目の"それ"が訪れて…… 私は私の能力が暴走することを思い知ったのだった。
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