風紀。

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俺の目に飛び込んできたのは、まさに一触即発。 山南敬助を筆頭とした、風紀幹部たちと生徒会がにらみ合う光景だった。 銀縁メガネの奥の切れ長な目を細めて、山南さんだけはにこにこと一見人の良さそうな黒い笑みを浮かべている。 そんな山南さんを、真正面から睨む、生徒会サイドの筆頭は意外なことにナルシスト副会長だ。 ……ああ。 『似てますもんね』 「な、っ…!何ですって!?」 呟けば、即座に金切り声が返ってきた。 わたしとこの男のどこが!だとかキャンキャン喚いてくる声にうんざりする。 ……うるせーな。すぐ反応するところが暗に認めてるだろ。 すると、そのことで俺の存在に気づいた山南さんが睨み合いを抜け出して、俺に近寄ってきた。 「どうも、白石くん」 いつぶりだっけ?と、亜麻色の髪をふわりと揺らして、山南さんが首を傾げる。……相変わらずの、ナルシスト副会長とは比べものにならない完璧な作り笑いだ。俺は苦笑しつつ、口を開く。 『こんにちは。山南さん。いつぶりですかね』 「えーと、最後に白石くんが暴漢病院送りにしたのが2ヶ月前でした。たしか」    『ああ、そうだったかも』 「また問題起こしてくれちゃって…いつになったら更正するんです?よりによって生徒会絡み」 こんな面倒なことってないですよ、と、黒い笑みの標的が俺に向けられて、苦笑いする。 このひと、実は大の生徒会嫌いだからな。俺が問題を起こしたことについてよりも、生徒会を巻き込んだことに怒ってるっぽい。 『山南さんのおっしゃる通りです。面倒事をもってきてすみません』 と、素直に言う。すると、 「まあ、存在自体が面倒のかたまりですしね。白石くんを責めることじゃないですね」 とわざとらしく生徒会の方を見ながら口に手を当てて、俺にすまなさそうな表情をつくる山南さんに笑いそうになる。 ナルシスト副会長に似ているとは言ったけど、本質的なものが全然違うんだよな、この人。 余裕綽々な様子も、風紀と俺の関係を悟られないように話す頭の良さも。 風紀室に山南さんがいたことも、また。俺にとっては嬉しい誤算だ。 ―――生徒会にとっては、違うみたいだけど。
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