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…それにしても、此処はうるさすぎる。
刹那、俺はあることを思いついて口角をゆっくりとあげた。すると、傍らの夜がうっとりとした表情で俺を見上げてきた。
そんな夜の頬を撫でて、俺は夜に耳打ちした。
『―…夜。淳のこと止めてきてくれる』
「はい、今すぐに」
するり、と名残惜しそうに俺の手の甲に自分のそれを重ねて。夜がスッとソファーから立ち上がる。
洗練された、無駄のない動きに。
夜を視界に入れていた風紀幹部の数人や小春たちが目を見開く。
―…ストン、とかすかに音を立てて、茶色の襟足からのぞく淳の首目掛けて夜の手刀が落とされた。
さすが、夜。
鮮やかすぎて、誰もが一瞬見とれたその空間で一人、俺はゆるりと微笑む。
「深月さんの邪魔だ。あっちに移動させる」
「お、おいおい……。そいつ、大丈夫かよ?」
「問題ない」
永倉が恐る恐る問いかけた声に、表情を変えずに夜が淡々と返す。
コイツこえー、と藤堂が呟いた声に俺はひっそりと笑う。
『――――いい子』
まさか気絶させるとは思ってなかったけど。
夜に引きずられてカーペットですやすやと眠る淳に小さくため息をつく。まあ、自業自得だ。終わらない撮影会なんて御免だ。
一連の流れで静まり返った風紀室で、夜が再びソファーに戻る動作だけに注目が集まっていた。主に恐れて。
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