風紀。

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「……山南さん。頼む。」 「ええ。―――今から、風紀による今回の事件についての査問を始めます。なお、校則に基づき、査問の進行はあくまで風紀委員のみによって行われるものとします。従って、査問の途中で退室、進行を妨害する言動、行為を行った者は査問内容と別件として然るべき処置を行使させてもらいます。 ……前置きは、このくらいでいいでしょう。」 土方に指示された山南さんが、笑顔を崩さずにお決まりの文面を口にする。 それに対して、不快そうに顔を歪めたのは言うまでもなく生徒会だ。 大方、何で自分たちがこんな目に…。とか思っているんだろう。 ま、これについては仕方がないと思うけど。 何てったって査問、と言えばこの学園の生徒の誰もが嫌がる、避けたいものだから。 内申が下がること、そして体裁が悪くなることを気にするためだけじゃない。 査問は鬼の巣窟、だなんて恐怖される風紀によって行われるものだからだ。何か問題が起こる度に、腕に腕章をつけた屈強な男たちが加害者を無言で連行するところなんて、トラウマになるのも頷けるよね。 そんな目に自分たちが遭う、いや現在進行形で遭おうとしているんだから。 査問って結構楽しいのに。 何度も経験している俺だけがこの空気に笑ってるけど。 不遜な態度の生徒会はともかく、不良もどきなんかは不良を気取ってるくせに気が弱いらしく顔がこわばっている。 情けねえな、とう斜め後ろを振り向きざまに挑発的に笑って見せた。 「っおい!なんだ、てめ……!」 「そこ。口開くな。」 すぐさま声を上げた不良もどきに、土方の後ろに控える斉藤が言い放つ。 ひとつ年下の斉藤にひるんで、顔を怒りに赤くした不良もどきは悔しそうに唇をかむ。 くつくつと、声わ上げずに笑っていると小春がたしなめるようにこちらを見てきて、それに笑って頷く。 わかってるよ、小春。 せっかく、小春にも協力してもらってこんな場面にこぎつけたんだ。 下手に動いて、みすみすこんなチャンスを逃す真似、 ―するわけ、ないでしょ?
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