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泣き声が僅かに止み、頼子がトイレから出てきた。
泣き腫らした目は赤みを帯びて、いつもの彼女以上に弱々しかった。
ポンポンと頭を撫でて。
その日は初めて一緒に帰って、初めて頼子の笑顔を見た。
今考えると、一緒にいようかなんて、かなり上から目線で傲慢な言葉。けれどそれでも後悔していないのは、やはり頼子が笑ってくれたからだと思う。
あの日から頼子は、私を良く注意して見る癖がついたみたいだった。
最初は多分、嫌われないよう嫌われないよう、私の行動ひとつひとつを注視していたのだろう。
呆れた私が、嫌わないからそんなに私の行動に過敏になんなくてもいいのに、と言った頃にはもう癖になっていたようだ。
嫌わない、なんて 分からない。不確かな保障は、けれど4年ずっと一緒にいることでほとんど確実なものになっている。
「そうだねー。頼子にだったら言ってもいいか」
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