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それでも、……キスはしてる。
その事実は頼子にすら、言えていない。
なぜなら、その記憶は私にとって嫌悪以外のナニモノでもないからだ。
封じ込めて、封じ込めて
見ないようにしてきたのに。
「……ま、なんとかするしかないかあ……」
ぽつり、と呟くと
「まあ、もし本当に嫌になったら家に逃げて来な。匿うくらいだったら出来るから」
そう笑って答えた頼子に、私は少しだけ感謝した。
―――季節は、夏の始まり。
まだ涼しさの残る緑色の風が吹く6月下旬のことだった。
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