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「美琴(ミコト)ー、みーことー」
「わっ、何々。聞いてるってば」
あれから二年が経ち。私は高校二年生になった。
これだけ年月が経つと、記憶というものは風化してゆるゆると浄化されて私の中に埋もれていくものだと思うのだけれど。
いまだに私は、あのキスを鮮明に覚えていて、現に今、これからのことを考えると酷く憂鬱だった。
「で、頼子(ヨリコ)。なによ」
さっきから私を呼び続けていた友達に先を言うよう促す。
校則違反を承知で緩く巻いた髪の毛を右手でクルクルまぜながら、彼女は悪戯っぽく笑った。
「そろそろあんたのその溜め息の理由を教えて貰おうと思って」
その言葉に少しだけ目を見開いた。
「え、溜め息ついちゃってた?アタシ」
「正確には二週間くらい前から何度もついちゃってますよ、アナタ」
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