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まじですかー、と大して困ってない声音で呟いてからひとつ伸びをした。
頼子はよく人を見ている。
正確には、私をよく見ている。
中学の頃、イジメとまではいかないまでも、何となく女子からよそよそしくされていた頼子。頼子はいつもひとりだった。
それは彼女の可愛さを妬む、というある種の劣等感から来ていたものだと今になって分かるけれど。
放課後のトイレで、彼女の啜り泣く声を聞いたときにさすがに私も胸が痛くなったのだ。
トントン、と個室トイレのドアを叩いて。
佐伯さん。明日から、ずっと一緒にいようか。
そう、呼び掛けたのを覚えている。
当時の私にとって、一緒にいた友達は薄皮一枚隔てた向こう。決して相容れない場所にいる気がしていた。
上辺だけのお付き合い。
彼女たちの好きな男の子が誰かは知っていた。けれど一緒に遊びに行ったこともなければ、彼女たちの誕生日だって知らない。
だったら、明日からその友達が頼子にすり変わったところで何が変わるというのか。
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