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気持ちはとっくの昔に傾いていて、身体も彼の方を向いているのだけれど。ただ1つ両の掌だけが、ささやかな抵抗をするかのように後ろ手に身体を支える。
それなのに。
曖昧な心を見透かすように彼がその手を取り、そこに唇を落とす。
そうなってしまえば抗う術など何もない。
熱くなった彼の掌に覆われた心臓がトクンと跳ね上がれば。
口の中に広がる果汁のような、濃くて甘い雫が、とろりと自分の内側を流れ落ちた。
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