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息が切れる。
景色が自分の右を左を、通りすぎていく。
足がもつれてしまいそうになるけれど、止まらないで走り続ける。
……いや、止まれない。
ちらり、と首だけで後ろを見るとドスドスと効果音のつきそうな勢いで、小太りの男が果物ナイフをちらつかせながら、叫んでおってくる。
「まてぇー!!」
「またねぇよ!!」
反射的に返しながら、今すぐ止まってしまいたい衝動にかられる。
さすがに、今すぐに止まることは後ろの男が許してくれそうにない。
暗い路地を必死に曲がってまこうとしても路地を知り尽くしているのか、男は少しするとすぐに追い付いてくる。
汗が吹き出す。
足の感覚がマヒしてくる。
どうしても、もう逃げられないと考えてしまう。
最後のあがきだと思い、路地の先にあるドアの開いていた廃墟のビルへと急いだー……。
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