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「それ、何?」
「あ、クッキーとチョコかな」
詩音は袋の中身を確認して少女の方へ顔を向ける。
「クッキーとチョコ……」
オウム返しのように呟くと、また大きな音をたててお腹が鳴る。
詩音は周りを軽く見渡し、苦笑いで口を開く。
「こんなとこで食べるのも、あれですけど……食べます、か?」
「うん、食べる」
少女は周りの環境など気にすることもなく即答で応え、布の隙間から右手を出す。
手首にぶら下がる手錠の鎖が音を立てる。
「手、汚れて……」
気まずげな空気の中。詩音は手錠の事にはふれず、手の衛生面を気にする。その手で食べるのはバイ菌を食べるのと同じとさえ言える。
「……ほんとだ。これじゃ、食べれない」
少女は自分の手を見て残念そうに言う。視線を手から詩音に映す。
「……なら、食べさせて。あなたが」
「えぇ!?」
「……じゃないと、死んじゃう」
困った顔をして、困る詩音の顔を潤んだ青い瞳で見つめると、少女は目を閉じて準備満タンと言わんばかりに口を開ける。
(おい、マジかよ)
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