= EpiSode.1 =

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「それ、何?」 「あ、クッキーとチョコかな」  詩音は袋の中身を確認して少女の方へ顔を向ける。 「クッキーとチョコ……」  オウム返しのように呟くと、また大きな音をたててお腹が鳴る。  詩音は周りを軽く見渡し、苦笑いで口を開く。 「こんなとこで食べるのも、あれですけど……食べます、か?」 「うん、食べる」  少女は周りの環境など気にすることもなく即答で応え、布の隙間から右手を出す。  手首にぶら下がる手錠の鎖が音を立てる。 「手、汚れて……」  気まずげな空気の中。詩音は手錠の事にはふれず、手の衛生面を気にする。その手で食べるのはバイ菌を食べるのと同じとさえ言える。 「……ほんとだ。これじゃ、食べれない」  少女は自分の手を見て残念そうに言う。視線を手から詩音に映す。 「……なら、食べさせて。あなたが」 「えぇ!?」 「……じゃないと、死んじゃう」  困った顔をして、困る詩音の顔を潤んだ青い瞳で見つめると、少女は目を閉じて準備満タンと言わんばかりに口を開ける。 (おい、マジかよ)
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