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仕方なしに袋から星形のクッキーを取り出す。緊張しているのか、指が震えている。
一呼吸置いて、少女の口へと運ぶ。
(なんか、めっちゃ恥ずかしいんだけどーーーーーー!!!)
心の中で叫ぶその表情はテンパっている。お互い一言も発することもなく、ただボリボリと食べる音だけ。
この状況は袋が空になるまで続いた。
「……お、おいしかった?」
どぎまぎとした口調で少女に尋ねる。
「おいしい。特に……黒くて、柔らかいの」
「それは生チョコだと思う」
「生、チョコ……また、食べたいな」
少女は一瞬目を丸くして、嬉しそうな顔をして呟いた。
その顔を見て詩音は小さく微笑む。嬉しさを隠すかのように。
詩音は改めて汚れた少女を見て、光のほとんど届かない路地の建物と建物の間から見える空を見上げる。
「……こんなとこで何かあれだし、家近く?近くまでおくるよ」
少女は言葉には出さず、首を振る。その後に寒いのか、身震いをした。
「(家、遠くなのか。つか、何でこんなとこいるんだろ)……路地出た近くなんだけど、家くる?」
顔を上げた少女は驚いた顔で、その潤んだ青い瞳で詩音を見る。
「……いいの?」
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