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それより詩音は驚いた顔をして、赤黒く染まった左の二の腕の袖と手を見ていた。
擦り傷と思っていたが撤回される。とても軽い怪我とは考えられないその様子。
「大丈夫……治ったから」
細い二の腕を右手で撫でながら、どこか悲しそうに言う。
右手首にある手錠の鎖は途中で千切れており、揺れて音を鳴らす。左手にはついていない。
傷口は閉じているらしく、血は出ていないようだ。
「……大丈夫って」
詩音は目を見開いて言う。困惑した表情に一筋の汗が流れようとする。
「そういうふうに、できてるの……」
肘を90度曲げて、手のひらを上にする。血がついてはいるが傷は1つもついていない。
よく見れば、少女の顔も足も汚れている割には傷はない。
傷とは別に詩音はふと足下を見て、置いてある手提げ袋に気づく。
中から青い体操服を出して少女に渡す。
「これは?」
「それ着たらいいよ。変な目では見られないと思うし」
少女は不思議そうな目をして受けとる。続けて詩音は言う。
「あの角で待ってるから、着替えた来て」
角を指差して言うと早足に向かう。
曲がって数歩進むとその場に頭を抱えて座り込む。
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