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2人が角を曲がると、その先に一段と強く見えて光る景色がある。
表の道だ。並んで建つ地区の人々の家、上から指す太陽光と流れる冷たい風。
道行く通行人は路地から出た詩音を横目で見る。
視線を無視して詩音は振り向き少女に言う。
「この向かい側に、って」
少女は出口から3歩程手前で立ち止まって、長い白の髪を撫でる。
「大丈夫さ。こうしてれば」
詩音は少女に近づき、巻いていたマフラーを髪がほとんど隠れるように巻いく。
マフラーの下から出る髪は制服の上着で隠してあげると後ろ向きで表道まで下がり少女を見る。
少女は驚いた目をして顔を上げる。すると太陽の光が少女の顔を半分だけ照す。
詩音は一瞬、何かを疑うかのように目を見開いたが直ぐに表情に戻し少女に言う。
「……その手の怪我、少しは手当てした方が良いと思う……上手く出来るか、わかんないけど」
最後にもそもそっと困った顔で笑う詩音を見て少女は小さく笑い、決心したのか道へと出た。
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