プロローグ 2度目の春

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ーーーん?…え……?あれ? 「おはよう、ハル」  後ろからぎゅっと抱きしめられて、正気に戻る。  正気に戻るっていうより、一気に目が覚めたって言った方が正しいかも。 「……お、おはよ……アキ」  ゆっくりと振り返る。  身体にはアキの腕がからまったまま。きつくもなく、緩くもない腕の中。……心地いい。あまりの心地よさに、私は再び眸を瞑った。 「まだ眠いの?  あぁ……そういえば、あと5分って言ってたっけ?」  閉じた瞼の先、ふ、っとアキが頬を緩めた気配。 ーーーうぅ。  は、恥ずかしい。……けど、違わない。  頭の中で言ったつもりだった言い訳は、しっかり寝言として聞かれてしまったらしい。……朝からとんだ醜態だ。 「いいよ?  じゃ、5分……だけだよ」    甘く囁かれて、アキの腕に力がこもった。  けれど、やっぱり……もう眠れそうにない。全身がアキを意識してる。  ここ。  アキのマンションに引っ越してきて、もうすぐ1ヶ月。  こんな風に、2人で目覚める事なんて……初めてじゃないのに。  引っ越してからも……ここに引っ越して来る前も。  そんなの、今までに何度もあったのに、いまだに……慣れない。  私とアキはこの春、付き合って1年を迎えた。  
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