プロローグ 2度目の春

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 その最愛の人(カレ)、アキこと真柴 翠(マシバ アキ)と婚約したのはつい先月のこと。 『本日はお日柄も良く……』  どこかで聞いた事のあるスピーチ。  仲人さんが話してたのをおぼろ気におぼえてる。実は私、極度の緊張でその時の記憶が曖昧なの。  婚約に正式とか略式とかあるのかはわからないけど、いかにも高級そうな料亭の一室で結納を交わした後、両家の家族が揃って会食した。  私の家からは、お父さんお母さんそしてお兄ちゃん。  お兄ちゃんは慣れないスーツで、何だか堅苦しそうだったな。  アキの家からはご両親をはじめ、アキのお兄さんのゴウさんその奥さんであるルリさんも出席してくれた。  そうそう。  ルリさんのお腹の中には今、赤ちゃんがいるんだよ。すっかり膨らんだお腹を撫でさせてもらったの!  アキにとって甥っ子か姪っ子になる赤ちゃん。出産はまだもう少し先だけど、今からとっても楽しみ。男の子でも女の子でも絶対一緒に遊ばせてもらうんだ!  ……と、まぁ。  家族に温かく見守られて、会食は和やかなムードの中スムーズに進行。  会食の最中、アキのお母さんである晶子さんから「ぜひ、盛大に婚約パーティーしましょうよ~」そう提案された。  けれど、私もアキも未成年。  しかも……私にいたってはまだ高校生、だし。  私達が婚約する事はちゃんと学校側に伝えてはいるけど、大々的に公表するつもりはない。興味本意に騒がれたくない、から。  そんな私の気持ちを知るアキが、 「いーよ。兄貴もしばらくそれ所じゃないだろ? ハルも学校と仕事で忙しいし」  そう、やんわり断ってくれた。  晶子さんは渋々といった体ではあったけど、とりあえず了承してくれた。そのかわり「結婚式は派手にやりましょ、約束よ?ハルちゃん」と、なかば強引に約束させられてしまったけれど。  アキは「母さんは嬉しくてしょうがないんだ、許してやって」と笑った。  そんな風に大事にされて嬉しくないはずがない。  私は「もちろんだよ」そう笑顔で答えた。    
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