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「桃谷さん?
どうかした? 具合でも悪い?」
いけない、ぼーっとしてた。
心配そうな声音にはっとする。
目の前で心配そうに眉根を寄せるのは、生徒会の役員の一人で保健委員長の小沢先輩。
「あ。いいえ……そういうわけでは。
実は、恥ずかしいんですけど、さっき渡り廊下で転けて……今ごろになって痛みが」
「あら、それは気付かなかった。大丈夫?」
気遣いの表情に、申し訳ないやら恥ずかしいやら。自然と苦笑いになる。
生徒会の議事録を書くのに、身体のあちこちに違和感を感じていた所だった。それがあの時、転んだ時の痛みだと気がつくのにそう時間はかからなかった。
肘と膝からはジンジンと痛みを感じるし、手のひらは擦りむいて少しばかり腫れ上がっている。さらに少量だけどうっすら血がにじんでいる。
とりあえずの応急処置としてハンカチを手のひらに当てながらやってはいたけど、不便は隠せない。
「あら、血が出てるじゃない。保健室行ってくる? とりあえず、バンソウコーでいいなら……私持ってるけど。でも消毒くらいしといた方がいいと思うわ」
うわぁー痛そうねぇ、と顔を歪める小沢先輩。
「この時間なら、まだ保健の先生……帰ってないはず。けど、もし不在だったらいけないから、私も付き添おうか?」と、腕時計を確認しながら呟く。
「……ありがとうございます。けど、保健室に行くほどじゃないです。でも絆創膏頂けたら……助かります」
「ホントに大丈夫?……はい、これ。バンソウコー」
気持ちは嬉しいけど、そんな大袈裟にしたくない。
親切な申し出に感謝しながら、私は「ありがとうございます」と、絆創膏を受け取った。
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