653人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
「戸締まりオッケー、っと……」
解散して誰もいない生徒会室はガランとしている。
明らかに仕事が少ない私は、さすがに申し訳なく思い生徒会室の片付けと鍵当番をかって出たのだった。
何でも鍵当番の先輩は用事があったらしく「助かるわぁ」と拝むような仕草をして急いで帰ってしまった。よっぽどはずせない用事があったのかもしれない。
鍵当番のルーチンは見直してもらおう。今の所、これまで役員でなかった手伝いの私は、当然鍵当番からもはずされている。
仕事では協力できなくても、そういう所でなら私でもきっとお役にたてる、はず。
あとは……と、生徒会室に隣接されている給湯室に目を移す。
約三畳くらいの給湯室には小さな流しと、小ぶりな冷蔵庫がある。そして木製の丸椅子が一つ。そんなに広くはないけど、ちょっと一息つきたい時、たまにここを利用したりする。
その給湯室に今年から誰が持ち込んだのかはわからないが、明らかに中古のポットが追加された。給湯室は火気厳禁、だが今年ポット使用の許可がおりたらしい。
それによって皆さんマイカップを持ち込み、それぞれ好みのインスタントドリンクやスープなどを持ちよるようになった。長時間にわたる時などは、インスタントラーメンを食べたりと、今では何かと需要が高い存在である。
そのポットのコンセントを抜いて、お湯を捨てる。ふきんで流しのまわりを拭いて片付け終了。
こういった雑務なら私でもできる。
むしろこういう仕事の方が、誰よりも慣れてる事に気付いた。
気負わず、自分が出来ることをすればいい。
自分の方向性が見えた気がして心が軽くなった。
扉の施錠を確認して生徒会室を後にする。
職員室に生徒会室の鍵を返すと、私はその足で体育館に向かった。
だいぶ日が長くなってきたけど、太陽はすっかり傾いて廊下は茜色に染まっている。
体育館に向かう足が、自然と早くなる。
体育館にはアキがいるはずだ。
朝、迎えに来てくれると言ってくれたアキからさっき届いたメール。
『お疲れ。
体育館にいるから。ゆっくりでいいよ』
とても……ゆっくりなんて出来ないよ。
早く、会いたい。
最初のコメントを投稿しよう!