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◇◇◇
「セーンパイッ!」
「…………」
掃除時間中。
私の班は中庭の担当。
雨上がりの中庭。緑が濃い。
中庭の清掃は結構人気の清掃スポット。
冬場や夏場は一時的に不人気になるけど、清掃内容はわりかとラクだから皆に好まれる。
視界の先にはおしゃべりに興じるクラスメート。
話の内容は来週からのゴールデンウィークの過ごし方。ここの所、教室内でもその話題で持ちきり。
「先輩っ! こっちだよ!」
「…………?」
誰かを呼ぶ声がする。
けれど、見回しても周りには誰もいない。空耳かとホウキを持つ手を再び動かす。
「ねぇー、無視しないでよ」
「…………ん?」
やっぱり誰もいない。
なのに、声だけする。
そもそも誰を呼んでるの?
「上、上だよ。先輩」
上? 聞こえた声につられて空を仰ぐ。
誰かと勘違いしてるなら教えてあげないといけない、し。
「あ……!」
眩しくて、手をかざしながら見上げた先にーーー
あ! 後輩……1号クンだ!
「やっと気付いてくれた!」
ぶんぶんと手を振る後輩クンに小さく手を振って答える。
「先輩、一人ですかぁ?」
辺りを見回すともう誰もいない。
清掃時間も残り5分。しかも今は落ち葉も少ない季節。中庭の清掃はすぐに終わってしまう。私がボンヤリしてる内にどうやらみんな撤収したらしい。
「ちょっと待ってて下さいー! オレ手伝いますよー。
今、行きますから」
私が返事をしない内に窓から後輩クンの姿が消えた。
手伝いますって言われても、掃除自体はもう終わっている。
目の前の落ち葉を集めて焼却炉に捨てに行き、ホウキを戻すくらいなのに。
そうこうしている内に、後輩クンが中庭に到着。
肩は激しく上下し、額にはうっすらと汗。
「もう掃除は終わってるから……良かったのに。しかも、そんな急がなくても用があるなら……」
「だって……早く行かないと先輩が帰ると思って」
はぁはぁと息も絶え絶え。
しかも、しゃがみ込んでしまった。
「…………ベンチ、座る?」
「はい」
とりあえず、木陰のベンチに座らせる。
こうまでして急いで来たのだから、何か用があるのかもしれない。
「ちょっとゴミ捨ててくるから、キミは休んでて」
「あ、じゃあオレも行きます!」
「いいよ。すぐ戻ってくるから座ってて」
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