653人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
それ以来、『颯太クン』は毎日姿を現した。
今日で……確か、4日目になる。
不思議なことに、颯太クンはどこでどう見計らっているのか、いつも私が一人の時に姿を現した。
移動教室の途中とか清掃時間、それから下校前とか。
かといって、別に大した話しをするわけではなくて……会釈程度の時もあれば、引き止められる時もある。
最初は別に何とも思わなかった。けど、何回か重なるごとに苦痛になっていった。
出会い頭にぶつかり私がケガをしてしまった経緯もあって……さらに色々とタイミングの悪さも手伝って、何となくナツに話せないでいたから。
そういう後ろめたさからか……アキにも何となく話しにくくて、少しづつ秘密を重ねてるみたいで気分が悪かったのだ。
「先輩……どーも」
今日も移動教室、家庭科室へ向かう途中の階段。
カレは私がここを通る事を確実に知ってる。
ちなみにナツは当番のため、先に行っている。
私の行動をどうしてこんなに把握してるのか。驚いてしまう。
「……こんにちは」
名前は知っているけど、それ以外は何も知らない。本当に不思議なコ。あえて私も必要以上に聞かないできた。
「あのね。キミは授業の準備とか……」ないの? そう聞こうとして遮られた。
「オレちゃんと『颯太』っていう名前があるんですけど」
何だか不自然に思えて、名前を呼ぶの実は避けてる。彼に名字を聞くけどはぐらかされるし……。
「何で名前なのかな……名字を教えて?」
「別に、名字なんてどーでも良くないですか」
飄々と言われて絶句。
いつものことだ。
ああ言えば、こう言う。
「あ。もしかして先輩ってば、オレに興味持っちゃったとか~?」
私は名前よりも名字で呼びたいと、もうずっと訴えてるのに。全く聞く耳を持ってくれない。
頭を抱えながら、それでも折れるわけにはいかない。
「あのね……!」
「ぷはっ! 先輩、おかしーの!
ジョーダンだって」
颯太クンを調べることは難しことじゃないと思うけど、そんなことしたくないから……しないのに。
「私、急ぐから……もう行くね」
「ん。じゃぁね~。
センパイ」
ガックリ。
また遊ばれてしまった……。
今日も……収穫は、ナシ。
最初のコメントを投稿しよう!