波乱の新学期

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「おっはよーっ!  ハールッ!」  ぎゅーっと後ろから抱きしめられて、それが誰のものだかすぐにわかる。振り返ると眩しい笑顔ーーー親友のナツだ。  ナツは親友であると同時に、私のお兄ちゃんの彼女。  そういうこともあって、私達は高校に入ってから知り合ったとは思えないくらい、本当に仲がいい。    ナツはさらさらのロングヘアを、最近はもっぱらおだんごにしている。ナツが言うにはそれが部活に一番支障がないらしい。  髪をあげたナツは大人っぽさが少し和らいで、その分、かわいらしさが倍増。当然、注目を浴びるわけで……。  実際、ナツが教室入ってから、数人の男子が目で追ってるのが確認できる。かわいいから当然といえば当然なんだけど……お兄ちゃんの気持ちを考えると……うん、まぁちょっと、複雑。 「ナツ、おはよ」 「一緒のクラス、超嬉しい! 嬉しくて叫んじゃった!」  満面の笑み……うぅ、かわいい。 「私も。  間違いじゃないかって何回も確認したよ。ほら!」    スマホの画面を見せる。そこには、 『真崎 菜津(マサキ ナツ)』 『桃谷 羽琉(モモヤ ハル)』  縦に並んだ名前。   「あー!  私も撮ったよー! 記念っ!」    ほら見て? 同じ同じ、とナツもスマホを見せてくれた。  アングルこそ違うけど、同じ内容の画像に顔を見合わせて笑いあう。   「と、ゆーことで……卒業までヨ・ロ・シ・クッ!」  え?……ナツ、サン?  どういうこと?    「卒業までって……?」 「やだー。ハル、もしかして知らないの?」  へ?   何、を?  きょとんとしてる私に「ウチの学校はね……2年から3年は繰り上がりでクラス替えないのよ」とにっこり。  ナツは続けて「だから、今年一緒のクラスだと、来年も持ち上がりで自動的に一緒なの」と苦笑している。  知らなかった!  クラスが離れても親友には変わりない……けど。でも、やっぱり、ナツと3年間一緒に過ごせるのは嬉しい! 「っていうか。  ……まぁ、私は3年間だけじゃなくて……ずっと友達だと思ってるけどね」  ナツは人差し指で自分の前髪をちょんちょん触りながら、照れくさそう。そんなナツが愛しい。 「うん、もちろんだよ」  卒業して、たとえ離れ離れになっても。 「ヨロシクね、ハル」 「うん……こちらこそ! よろしく、ナツ」  
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