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彼女は 「はい、大丈夫です。」と恥ずかしそうにつぶやく。 何か話したいのにうまく話せない 背の低い彼女を見ると、足元に落ちているものが見える しゃがみ込み、その本を拾う。 そして、なぜか自分が持っている方の本を彼女の前に差し出す。 「落ちてましたよ。どうぞ」と すると彼女は少し顔を上げて 「ありがとうございます。」と微笑み 腕時計を気にしながら 「…あの、仕事に遅れるので失礼します。」と慌てた様子で去っていく。 そんな彼女を見送るしかなくて 呼び止めたい気持ちを去っていく彼女の方に少し伸ばした手だけが現していた。
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