黒い石

3/93
前へ
/93ページ
次へ
文科系、芸術志向とも言えなくもないが、その実態はただの無精者。 だから、さあ散歩だ、といさんで家を出ても、帰ってくるまでに二十分とかからない。 消費カロリーからいえば、本当に微々たるものだ。 家を出てから東へとのびる道を歩く。 ゆるやかで真っ直ぐな上り坂だ。 しばらく歩くと、広大な敷地に建つ洋館が左手に見えてくる。 道はその洋館の東の端で行き止まりである。 つまり道の洋館の南にあたる部分は、自然と洋館の専門道路となっている。 私は毎日その洋館をしばらく眺める。 何度見ても飽きないからだ。 洋館を眺める時間を含めて二十分かからないのだから、散歩の距離がどれほどのものなのかが知れよう。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加