呼び声

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    「ところでよ、澪は?」 食べ終わったアイスの棒を口で弄びながら速人が問う。 「あぁ、アイツなら遅れるって連絡があった。お前と違ってな」 「まぁだ怒ってんのかよー。何回も謝っただろ?」 「謝っただけな」 速人は遅刻の常習犯で、遅れる度に謝りはするのだが反省はしていない。 「見た目通り真面目になれよ」 そう。速人は見た目は気弱で真面目そうに見えるのだ。 「眼鏡かけたらガリ勉で通るぞ」 「そう言うなって。髪染めんのはめんどくせーし」 「まぁ確かにな」 上手い事はぐらかされたのだが、隆也はいつもの事と気にしてないように返事を返す。 「まぁ澪はいいとしてよ、瑞穂は今日来ねーの?」 「いや、来てたぞ?」 「来てた?」 よくわからないといった感じで速人が首を傾げる。 「あぁ、ちょうど速人と入れ違いでな。もうすぐ戻ってくるんじゃねぇか?」 「そうかそうか」 「このクソ暑ぃ中野郎2人っつーのもそろそろ限界だしな」 隆也は服の首もとを摘み、パタパタと扇ぎながら笑って言った。 「それもそーだな」 速人も釣られて笑う。 「んで?瑞穂はどこ行ったん?」 くわえていた棒を捨て、速人が問う。 「さぁ?知らねぇ」 「帰りに何か飲み物でも買って来てくんねーかな」 速人が立ち上がりながら言った。 「瑞穂に限ってんな気の利いた事するかよ」 隆也は座ったまま速人の方を振り向き、笑って言った。 「ははっ。そりゃそ………イヤイヤソンナコトナイト思ウゾ?」 笑いながら顔を上げた速人は笑顔のまま固まった。 「ん?どーしゴフッ」 がすっと嫌な音を立てて隆也が倒れる。 その横には紙パックのジュースが転がっていた………。    
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